114 「Mr.インクレディブル 」 歪んだ能力者たちの嘲笑 | ササポンのブログ

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ちょっと前まで
世のサラリーマンが
子供に見せたい番組として
常にトップにランキングされていた「プロジェクトX」
あの番組で取り上げられる人たちは、みんなエリートである。
その世界では、右に出るモノはいないといわれている、天才職人たちである。
それがリストラや、時代遅れで、挫折しただけである。

そんな人たちの物語が
なぜ
3冊100円でも売れない凡庸なサラリーマンたちを
感動させたのか?

エリートも人間だよ、
家族のために
愛する妻のために
必死で働いているんだよ・・
君たちと同じなんだよ・・
そんなエピソードを並べることによって
エリート意識を隠して
凡庸なサラリーマンを感動させているのだ。

そう・・。
まるでこの映画のように・・。
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ピクサーの映画と
ディズニーのそれまでのアニメの大きな違いは
登場人物がエリートである・・という点だ。
「モンターズ・インク」もトップの成績を収めるエリート社員だったし
「カーズ」もトップマシーンだ。
平凡な主人公が
頑張ってヒーローになる従来のディズニーの物語とは
大きく違っている。

そんな
ピクサーのカラーに最も適していたのが
このアニメの監督、
ブラッドバードである。
批評家に絶賛されながらも
興行的に失敗した「アイアンジャイアント」
そのあとに
理不純なほど長期に渡り
干されていたブラッド監督。
そのときに異端のゆがんだエリート意識が
生まれた。

もしかしたら
ブラッド監督は
このキャラに自分を投影していたのかもしれない。
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純粋な憧れが裏切られ
それがゆがんだエリート意識となって
巨大な化け物となる。

もしかしたら
ブラッド監督は
このシンドロームを主役にしたかったのかもしれない。
それほどまでに
この男の意識の歪みは
悲しく
しかし
強大である。
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はっきり言って
この家族・・いやな奴らである。
徹底的に普通の人たちを見下ろしている。

平凡に生きることを卑下して
そこにセコセコ生きる人たちを
バカにしている。

だからこそ
自分たちが守ってやる・・というエリート意識・・。
極めて不愉快である。

しかし
彼らは
世間から
完全に
異端視されていた。
その優れた能力は封印され
それを
使うなら社会から追い出してやる・・と言われていた。

そんな彼らの能力を
本当に必要として
渇望したのが
皮肉にも
歪んだエリート意識の権化である、シンドロームであった。
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シンドロームの能力は
彼のそれを上回る
インクレディブル家族の
優れているが極めてフリークな能力があってこそ
生かされるのだ。

そう考えていくと
この映画は
恐ろしいほどに
異様な映画となる。

世間とは関係ないところで行われる
異端と異端、
エリートとエリート
フリークとフリークの
格闘物語である。
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家族愛とか
夫婦愛とかを
うまく使って描いているので
一般の人たちにも
受け入れられるような物語になっているが
実際にこの映画の根底に流れるのは

優れた能力を持ちながら異端視された人たち同志の
小競り合いである。

もちろん
ブラッド監督自身が声を担当した
世間の評価を
鼻でせせら笑いながら
ヒーローたちの衣装を作るエドナも
その仲間である。

ここまで
エリート意識を持った登場人物だけで
彩られた物語などいままでなかった。

それを作り上げた
ブラッド監督の
フリークな才能に
僕は
たまらなく魅了される。


そして
その異様な世界観は
ブラッド監督の次回作「レミーのおいしいレストラン」で
さらに過激になった。

異端のエリートが
凡庸の極みである主人公を
髪の毛を引っ張って
操っているのだ。

ブラッド監督の
そんな世界観に
自分を干した映画会社や
自分の作品を無視した世間の観客に対する
歪みきった嘲笑をみる。


やはり
シンドロームは
ブラッド監督自身なのだ。
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